「小さな会社だから、ブランドなんて無理」そう思っていませんか?
ブランドとは本来、商品が持つ「個性」や「世界観」のことを指します。言い換えると、「商品の個性や世界観と顧客との感情的な繋がり」ということです。
この感情的な繋がりで、中心的な役割を果たすのがブランドストーリーです。商品の世界観にまつわる魅力的なブランドストーリーが、顧客の心に訴えかけ、強い絆をつくります。
ロゴマークやデザインをブランドと思っていると、本質を見間違える可能性があります。なので、顧客へ訴えかけるストーリーができれば、小さな会社でもブランドを作ることができます。
私も以前は、伝統のある大企業にしかブランドは作れないものと思っていました。しかし、ファンから熱狂的な支持を集める小さな会社と交流を深める中で、信頼関係によってブランドを築けることを知りました。このコラムでは顧客と強い絆を結ぶブランドストーリーの作り方を詳しく解説します。
このコラムを読み終えた頃には、ブランドストーリーの作り方を理解し、ブランド力で販売する会社の秘訣を知ることでしょう。
ブランドストーリーとは? 中小企業が語るべき理由
ブランドストーリーとは、企業の歴史、ビジョン、価値観、商品やサービスのコンセプトを物語形式に紡いだものを指します。
商品やサービスの機能やスペックをただ単に説明するのでなく、「存在理由」や「生まれた背景」「目指す未来」をストーリーで伝えることで、感情的な繋がりをつくることができます。
なぜ、ストーリーにしなければいけないのか? 理由は3つあります。
理由1:顧客は感情で商品やサービスを選ぶ
安くて、可もなく不可もなければ、理屈上は、最安値の商品を選びます。しかし、現実には、高額で、機能が劣るものを選んだりします。人間の行動は非常に不可解です。
街乗り用のバイクなら、理屈上は、大型で燃費の悪いハーレーダビッドソンは選びません。しかし、ハーレーのブランドに魅せられた人にとって、燃費や運転のしやすさは購入の決め手にはなりません。
商品を選ぶ基準が、イージーライダーに象徴される自由さやワイルドさ、大型排気量のV型ツインエンジンが奏でる独特の振動と排気音だったりします。
それだけではなく、「初めて生産されたハーレーは、キャブレターにトマトの空き缶が使われていた」や「軍の命令に従って、第一次世界大戦時には戦闘機を作った初めのオートバイメーカーになった」など、まことしやかなブランドストーリーが、さらに顧客の感情を揺さぶります。
理由2:企業の理念・価値観への共感が購入の動機となる
企業の理念・価値観をストーリーで伝えることで、共感を得ることができます。
企業理念や価値観の説明は、どうしても押し付けがましくなります。しかし、理念や価値観をストーリー仕立てで説明すると、すんなり理解してもらえたりします。また、もし、その価値観に共感してもらえれば、購入への強い動機になります。
理由3:ストーリーは記憶に残りやすい
ストーリーは、事実や数字の羅列よりも記憶に残りやすい
ストーリーは、事実や数字の羅列よりも記憶に残りやすいと言われています。スタンフォードの研究によると、ストーリーで語ることによって、通常の22倍記憶に残りやすいというデータもあります。ストーリーは印象に残りやすく、記憶に強く刻み込むことができます。
ファンが共感するストーリーの特徴|必要不可欠な3つのポイント
ファンが共感するブランドストーリーには、共通する3つのポイントがあります。特に中小企業にとって、これらの要素を取り入れたストーリーを作ることで、顧客との感情的なつながりを強化することができます。
ポイント1:パーソナルな情報であること
ホームページやブログで、個人的な情報をオープンにすることに抵抗を感じる方がいます。自分の個人的な話に興味を持ってくれる人なんていないと思い込んでいるのです。その考えは、今すぐ捨ててください。
パーソナルな情報であればあるほど、顧客はブランドストーリーに興味を持ちます。創業期の挫折や開発秘話。そして、それらの問題をどう乗り越えたのかという物語に共感し、親近感を持ちます。
ただ、前提条件があります。それは、顧客があなたのストーリーに共感するということです。
企業視点の「この商品って素晴らしいです」や「ウチの技術人はスゴい」のような話には共感は得られません。
「満を持して発売した商品がまったく売れない」、「失敗の連続で仲間割れ、ケンカが絶えない」「次々に人が辞めていく」など、幾多の失敗の末に掴んだ成功に、人は自分を重ねて引き込まれていきます。
順風満帆ではないパーソナルなストーリーにこそ、自分を投影し、「この会社こそ、自分が応援する会社」「自己実現のために身につけるべき商品」と思ってもらえるのです。
自分の失敗を公表することは恥ずかしく、なかなか表に出したくないものです。また、顧客に見せるのは綺麗な部分だけのほうが良いと思いがちですが、それは大きな間違いです。
プロジェクトXでは、再現ドラマを見て涙する当事者の姿に、もらい泣きしてしまいます。人間臭いストーリーによって、感情的な繋がりが生まれる典型的な瞬間です。
あなたにも、顧客に伝えるべきドラマが必ずあるはずです。
ポイント2:心に響くストーリーであること
ストーリーは人の感情に直接訴えかける力があります。特に、情熱や誠実さなど、人間的な側面を伝えることに長けています。
ストーリーは人の感情に直接訴えかける力があります。特に、情熱や誠実さなど、人間的な側面を伝えることに長けています。
では、どのようにすれば心に響くストーリーが作れるのか。ポイントは、顧客の悩みや願望に、どう寄り添うかです。心に響くブランドストーリーを作るには、顧客の悩みや願望と、商品が生み出す価値が一致している必要があります。
例えば、「大企業では叶えられなかったサービスの向上によって顧客に喜んでもらう」が創業のキッカケだった場合、サービスの悪さに疑問を持つ消費者の共感を得ることができます。
「顧客からのクレームに誠実に向き合う自分に対して、会社の常識に沿わないという理由で、信念を曲げざるを得なかった」という苦い過去の思いから、顧客に寄り添った高品質なサービスの実現を目指し、今、仕事に取り組んでいるというようなストーリーは顧客の心に響きます。
スターバックスの「会社でも家でもない第三の場所の提供」というのも、顧客の悩みや願望に寄り添ったメッセージです。
ポイント3:メッセージをシンプルな一言にまとめる
あなたの会社がしようとしていることが何なのか? 誰でも一瞬で理解できるように、シンプルな言葉にする必要があります。
どんなに良いストーリーであっても、話が長く、複雑であると顧客の記憶に残りません。印象に残すには、そのストーリーを凝縮したシンプルなフレーズにまとめる必要があります。
例えば、Appleの「Think Different」やNikeの「Just Do it」のようにブランドストーリーの本質や価値観をシンプルなフレーズで表現することで、顧客の記憶に残りやすくしています。このようなキャッチフレーズによって、商品やサービスの細かい説明に頼らず、瞬時にブランドのアイデンティティを顧客に伝えられます。
ブランドストーリー作成のための3の手順
手順1:ブランドの価値観とビジョンを明確にする
ブランドストーリーの根幹は、自社の存在理由です。自社がどのような価値を世の中に提供しているのか、どこへ向かって進んでいくのかを明確にしていきます。現在は、過去から未来に繋がっていきます。創業のキッカケなどブランドの原点から目指すべき未来を言語化していきます。
手順2:ブランドストーリーを伝えるべきペルソナを決める
ターゲットとするペルソナを明確にします。ペルソナとは、ターゲットとする理想の顧客を、架空の人物像として設定したものです。名前や年齢、職業、ライフスタイル、価値観など、具体的な事柄を設定し、実際に存在するかのように詳細にキャラクターを作り上げていきます。そして、ペルソナのニーズ、願望、悩み事を掘り下げていきます。
手順3:エピソードを洗い出し、核となるストーリーを決める
顧客との裏話、開発秘話、社員との葛藤、創業時の思い出など、今までのエピソードを洗い出し、時系列で並べていきます。そして、ペルソナの願望や悩みに寄り添った、自社が提供する商品やサービスの価値と合致する核となるストーリーとして仕上げていきます。
はじめから、完璧なブランドストーリーを作ろうとすると、時間だけが過ぎていってしまいます。「俺たちって、こんな価値観を大事にして起業して、こんなお客さんに喜んでもらおうと思って一生懸命仕事をしてるよね」ということを文章にまとめることを第一に考えて作成しましょう。作成したものに違和感を感じたら、途中で修正することも可能です。
まずは、はじめの一歩を踏み出すことが重要です。
まとめ
ブランドとは、商品が持つ「個性」や「世界観」のことです。ブランドストーリーは、その「商品の個性」と「顧客」とを感情的に繋ぐ架け橋のようなものです。
企業理念や価値観の説明は、どうしても押し付けがましくなってしまいます。ストーリー仕立てにすることで、マイルドに理念や価値観を伝えることができます。
ブランドストーリーは必ず作らなければいけないというものではありません。しかし、ブランドストーリーによって、消費者の共感を集め、独自の世界観で顧客と繋がるコミュニティを作ることができます。ぜひ、ファンマーケティングを成功させるためにも、ブランドストーリーにチャレンジしてください。
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