顧客が商品やサービスと出会い、購入に至るまでの道のりを可視化した表を「カスタマージャーニーマップ」と言います。
売る側の人間は、なかなか顧客目線で商品やサービスを見ることができません。
そのため、顧客がどのように商品を知り、どんな商品情報を見て、「欲しい」と感じ、購入に至るかを図化することで、顧客心理を読み解くことができます。
顧客は衝動買いばかりしている訳ではありません。ちゃんと下調べをし、比較検討し、購入に至ります。それまでに長い時間を費やします。
逆に、顧客が求める情報を、欲しいタイミングで提供すれば、販売効率を上げることができます。売る側の目線では気づかない障害を、多く見つけることができます。このコラムでは、初心者の方向けにカスタマージャーニーマップの作り方を詳しく解説します。
カスタマージャーニーマップとは?
顧客が下す意思決定を点ではなく線で可視化した図を「カスタマージャーニーマップ」と言います。
顧客理解が曖昧だと、良くないタイミングで、誤ったメッセージを、見当違いの媒体で発信している可能性があります。図化することで、顧客が商品を認知し、商品について学び、比較検討し、購入に至る流れを見える化することができます。その図に、自社のマーケティング活動を当てはめることで、ムダな集客コストや営業コストを炙り出すことができます。
カスタマージャーニーマップを構成する要素
カスタマージャーニーマップを構成する要素は大きく下記の4つに分かれます。
- 構成要素1:ステージ(段階)
- 構成要素2:ニーズ(顧客ニーズ)
- 構成要素3:タッチポイント(顧客接点)
- 構成要素4:アクション(行動)
購入までの一連の流れを、マトリックス図化して、この4つの要素を当てはめていきます。下記の穴埋め式テンプレートを使って、ビジネスシューズを購入する顧客を例に、詳しく見ていきます。
構成要素1:ステージ(段階)
顧客が購入に至るまでの道筋を、ステージ(段階)毎に分けていきます。
ステージは、「認知」「情報収集」「比較検討」「購入」「ファン化」など、典型的な顧客が購入するまでの流れに沿って、顧客の行動フェーズをわけていきます。下記の穴埋め式のテンプレートに当てはめると、
ビジネスシューズの場合、「認知」「情報収集」「比較検討」「来店」「購入」にわかれます。
構成要素2:ニーズ(顧客ニーズ)
次に、各ステージ毎の顧客のニーズを書いていきます。「本当に良いものを知りたい」「関連する情報を知りたい」「他と比較検討したい」「より詳細な情報が知りたい」など、典型的な顧客のニーズ(欲求)を書き出します。
【ビジネスシューズを購入する場合】
認知 : 「いい靴が欲しいな」
情報収集 : 「どんな靴がいいかな」
比較検討 : 「どれがいいかな」
来店時 : 「この靴にしようという判断は間違っていないかな」
購入時 : 「今買うか、ネットで買うかな」
ここで重要なのは、顧客が使うであろう言葉を使うということです。
構成要素3:タッチポイント(顧客接点)
顧客が購入までに辿る、自社と接触する媒体を特定していきます。タッチポイントには、「テレビCM」「雑誌広告」「検索サイト」「ネット広告」「ウェブサイト」「キャンペーンサイト」「ソーシャルメディア」「メールマガ」「ニュースレター」「クチコミ」「店舗」などがあります。
こちらも購入の流れに沿って、媒体を決めていきます。
【ビジネスシューズの場合】
認知 : 「雑誌広告やディスプレイ広告」
情報収集 : 「お役立ち情報やまとめサイト、各社のウェブサイト」
比較検討 : 「各社のウェブサイトの詳細情報ページやユーザーボイス」
来店・購入時 : 「店舗やウェブサイト」
構成要素4:アクション(行動)
各ステージ毎に顧客がどのような行動を取るかを、特定していきます。ここで重要なのが、タッチポイントで得た情報によって、「物事に対する見方、感じ方が変わり、その結果として起こした行動」を書くということです。(わかりづらいので、後ほど詳しく解説します。)
【ビジネスシューズの場合】
認知:雑誌広告を見て、「いい靴が欲しいな」から「そろそろ買い替えようかな」に変わる。
情報収集:ブログを読んで「どの靴がいいかな」から「黒いスニーカーはビジネスで使える」に変わる。
比較検討:詳細ページを読んで、「どれがいいかな」から「スタンスミスかリーガルにしよう」に変わる
来店時:「リーガルにした判断が間違いではないか」から「軽くていいな、これにしよう」に変わる。
購入時:「今買うか、ネットで買うか」から「ここで(店舗)で買おう」に変わる。
表に落とし込んでいくことで、顧客目線でどのように見られているかがわかります。そして、どの段階で、どのような情報に触れることで、考え方を変えるのか、そして、購入へ進んでいくかがわかります。
その結果、どこに障害があるのか仮説を立てることができるようになります。
パーセプションチェンジとは?
物事に対する見方や感じ方が変わることを、マーケティング用語で、パーセプションチェンジと言います。ただ、何もなければ、人の見方や感じ方は変わりません。何らかの「働きかけ」があって、物事に対する見方や感じ方が変わります。
例えば、「ナスが嫌い」という人がいたとします。その人に、「油で炒めたら、おいしいよ」と、調理をして食べさせました。すると、「炒めたら、こんなに美味しんだ!」と、それまでの「ナスは美味しくない」という見方・感じ方を「ナスは美味しい」に変えることができました。
油で炒めて提供するという、「働きかけ」によって、パーセプションチェンジが起こりました。
カスタマージャーニーで売上をアップする5つのステップ
それでは、具体的にカスタマージャーニーマップを作り、売上アップに繋げるための5つのステップを紹介します。顧客にカスタマージャーニーをスムーズに進んでもらうためには、ステージ毎に、パーセプションチェンジ(見方や感じ方を変える)してもらう必要があります。
カスタマージャーニーをうまく回すには、パーセプションチェンジを意識することが、とても重要です。そのためのステップは以下になります。
- ステップ1:ペルソナを設定する
- ステップ2:カスタマージャーニーマップを作成する
- ステップ3:パーセプションチェンジするための「働きかけ」が何か仮説を立てる
- ステップ4:仮説を立て検証する
- ステップ5:PDCAを回す 定期的な見直しと更新
ステップ1:ペルソナを設定する
マーケティングで「ペルソナ」とは、自社の商品やサービスを利用する典型的なユーザー像のことです。ターゲットが性別や職業、地域などの属性を表すのに対して、ペルソナは、1人の架空のユーザーを具体的に設定していきます。
顧客像が具体的であればあるほど、カスタマージャーニーマップも具体的になります。
ステップ2:カスタマージャーニーマップを作成する
先ほどの手順で、ステージ、ニーズ、タッチポイント、アクションを埋めていき、カスタマージャーニーマップを作成します。作成する際は、設定したペルソナになりきって、顧客目線で作成してください。
ステップ3:パーセプションチェンジするための「働きかけ」は何か仮説を立てる
カスタマージャーニーマップを俯瞰して見て、それぞれのタッチポイント毎に、どのようなメッセージを発信すれば、パーセプションチェンジが起こるか仮説を立てます。
例えば、情報収集のタッチポイントになる「お役立ち情報」では、「どんな靴がいいのかな」を「黒いスニーカーだとビジネスでも使える」にパーセプションチェンジしなければなりません。ということは、「商談でも失礼にならない黒のビジネススニーカー5選」というブログ記事を発信すれば良いのではという仮説を立てることができます。
ステップ4:仮説を立て検証する
ステップ3で立てた仮説が正しいか、テストマーケティングを通して検証していきます。仮説が全て正しいとは限りません。まず、小規模なグループでテストを行い、成果が出たものを大規模に展開していきます。
ステップ5:PDCAを回す 定期的な見直しと更新
PDCAを回し、最適化を図ります。顧客は心変わりをします。カスタマージャーニーマップは、定期的に見直し、更新していきます。
顧客目線で商品、サービスを見ることは、非常に難しいことです。顧客目線で見るための補助線として、カスタマージャーニーマップはは非常に有効です。
ぜひ、活用いただければと思います。
まとめ
カスタマージャーニーマップは、顧客が下す意思決定を点ではなく線で見ることができるようになります。ただ、それだけでは、売上をアップすることはできません。
顧客はパーセプションチェンジを繰り返し、購入に至ります。販売を増やすためには、どんな「働きかけ」をすれば、パーセプションチェンジが起こるのかを見つける必要があります。
ぜひ、カスタマージャーニーマップを使い、有効な「働きかけ」を見つけてください。