マーケティング活動の成功は、ターゲット顧客に、いかに響くメッセージを届けることができるかにかかっています。しかし、そのターゲット顧客が漠然としていると、効果的なメッセージを作成することができません。そこで重要になるのが、ペルソナの設定です。
ペルソナとは、ターゲットとする理想の顧客を、架空の人物像として設定したものです。名前や年齢、職業、ライフスタイル、価値観など、具体的な事柄を設定し、実際に存在するかのように詳細にキャラクターを作り上げていきます。このペルソナを基に、顧客が本当に求める商品やサービス、メッセージを設計していきます。
このコラムでは、ペルソナマーケティングの基本的な考え方から、その作成プロセス、そして、どのようにして実際のマーケティング活動に活用していくのかを解説します。
ユーザーを具体的にイメージ出来ていますか?
「ウチの顧客は、都心に住む30代前半の共働きの子育て世代です」
ユーザー像を訊ねると、こんな答えが返ってくる。ただ、もっと具体的にユーザーをイメージできないと、売れるホームページを作ることはできない。
ペルソナ設定は、マーケティングにとって超重要。ただ、ターゲットとペルソナの違いがわからないという方も多いのでは。ペルソナは、自社の商品やサービスを購入、利用するだろう典型的なユーザー像のことを言います。具体的に、氏名や年齢だけでなくライフスタイルや価値観など、架空ではあるものの、「こういう人が顧客だよね」というレベルまで落とし込んだものです。
今回は、ペルソナ設定の具体的な手順を紹介しながら、マーケティング的に、どのようなメリットがあるのかを詳しく解説します。
「ターゲット」と「ペルソナ」の違いとは?
ターゲットは、年代や性別、家族構成、地域、職業などデモグラフィック的に、見込み客の属性を表したものになります。「ウチの顧客は、都心に住む30代前半の共働きの子育て世代」というのが、まさにターゲットになります。
それに対して、ペルソナは、そのターゲット層の中の顧客をさらに絞り込んで、「自社の商品やサービスを購入、利用する典型的なユーザーを、架空の顧客として人物設定したもの」になります。
なぜ、「ターゲット」ではなく「ペルソナ」?
マーケティングでは、顧客を詳細に絞り込めれば絞り込むほど、訴求効果を高かめることができると言われている。
例えば、
- 「女性の方、子供用の服を売ってます!」
- 「30代前半の子育て世代の女性の方、子供服をバーゲン中です!」
- 「中野幼稚園の翔平君のお母さん、15日より、幼稚園指定の体操着が30%オフのセールをスタートします。入園時に購入した体操着、そろそろ小さくなってきてますよね。先着30着なのでお急ぎお確かめください」
「30代前半の子育て世代の女性」を、「翔平君のお母さん」まで具体的にするイメージです。そうすることで、ペルソナ(ユーザー)が、どんな場面で、どんな課題を感じ、どんな意思決定をするのか、想像しやすくなります。
ターゲット層を設定することも重要ですが、今は、顧客のニーズが多様化し、集団としてユーザーを捉えてしまうと、顧客目線のマーケティンが難しくなってしまいます。
一個人のペルソナを設定して、その人が利用するメディアで、効果的にコミュニケーション設計していく。そんなアプローチをしないと成果が出なくなっています。
ペルソナを設定するメリット
ペルソナを設定することで、対象とする人物像が明確になるので、マーケティングアプローチに一貫性が出るようになります。
具体的には、以下のメリットが挙げられます。
ユーザーが抱えている悩みや不安を想像しやすくなる
ペルソナを設定することで、ユーザーが抱えている悩みや不安を想像しやすくなります。
マーケティング活動で、常に重視することは、「商品・サービス」ではなく、「ユーザー」です。企業が売りたいモノ、企業の方針にあったモノを開発し販売しても、よほど画期的でない限り、なかなか売れるようになりません。ユーザーに寄り添い、ユーザーが必要とするモノを見極め、提供していくことを、まず考える必要があります。
その際に重要になるのが、ユーザーがどのような悩みや不安を抱えているかをリアルに掴むことです。ユーザーニーズに沿ったコミュニケーションをする上で、ペルソナが抱える悩みや不安を的確に理解することがとても重要になります。
ユーザーのニーズに合った商品・サービスを開発できる
ペルソナを設定することで、ユーザーニーズを具体的に想定することができるようになります。ニーズを明確に掴むことで、商品・サービスの要素も絞り込んでいくことができます。
アプローチしたいユーザーが曖昧であれば、販売していく商品やサービスも幅広い層に対応していかなければならず、エッジの効いた訴求ができなくなる。
今の時代、多くの人にウケる商品やサービスを提供するのではなく、コアな限られたファンに支持される商品開発が求められます。そのため、ペルソナ設定を行い、ユーザーをできるだけ絞り込むことが重要です。
組織全体でユーザーイメージを共有できる
チームでマーケティングを行う場合、メンバー同士での認識のズレが、どうしても発生します。
ただ、意外と、ターゲット層としての顧客像、年齢や性別、職業などのデモグラフィック的な情報は共有されています。しかし、それだけでは、どうしてもブレが出ます。
例えば、
「30代前半の子育て世代の女性」では、「子供の服にお金をかけたくない」「お金をかけてもいい」と思っているかは、判断が人によって、それぞれです。
それに対して、「『共働きで、節約家の翔平君のお母さん』は、品質と価格のバランスを考えて子供服を選ぶ人だから、今回の企画は、『幼稚園指定』を強調しよう」と、チームメンバーで、ペルソナの価値観の認識をそろえることができます。
ターゲット層よりもペルソナのほうが、より明確にユーザーイメージを共有できることがお分かりいただけると思います。
ペルソナ設定の手順
ペルソナ設定の手順は、以下のステップで進めていきます。ただ、ペルソナ設定には、それほど時間をかけるかける必要はない。理由は2つ。
- 正解は、顧客に聞かないとわからない
- テストマーケティングに費用がかからなくなった
どんなに時間をかけてペルソナ像を検討としても、実際に、広告・販売をして、顧客に聞いてみなければ、正解はわかりません。
理論上、どんなに正しくても、ユーザーが購入しなければ、それは不正解。
頭デッカチになって、想いを押し付けるのではなく、素直に顧客の声を聞くことが重要です。
そして、顧客の声を聞くテストマーケティングが、以前ほと費用がかからなくなった。
簡単に、費用をかけずに確認することができるようになったので、会議室で熟考するよりも、トライ・アンド・エラーを繰り返した方が、早く正解に辿り着けます。
そのため、ペルソナ設定に多くの時間をかけずに、逆に、実践した後の検証に時間をかけることが重要です。では、どのようにペルソナを設定するのか?
Step1:ターゲット層を設定する
まずは、デモグラフィック的なターゲットを設定します。STP分析などを使いターゲット層を絞り込んでいきます。STP分析は、近代マーケティング理論の神様、フィリップ・コトラー氏によって考案された分析手法です。
セグメンテーション(市場を細分化)、ターゲティング(ターゲット顧客)、ポジショニング(立ち位置)の頭文字をとったマーケティングの代表的なフレームワークです。
まずは、大きな層としてのターゲット顧客に絞り込んでください。
Step2:既存顧客から情報を収集する
もし、既に販売をしている商品なら、購入したユーザーから情報を収集し、ペルソナ像を明確にしてきます。以下のようの手法で情報を収集していきます。
- アンケートやグループインタビューの実施
- 販売データの分析
- マーケティングデータの分析
既存顧客は情報の宝庫です。アンケートやインタビューをすることで、顧客像や購入までの気持ちの動きを知ることができます。また、販売データやウェブ解析ツールを使うことで、ユーザーとの接触ポイントも知ることができます。どのようなツールで接触すべきかを洗い出すことができます。
Step3:ペルソナの設定
年齢や性別、職業、年収、住んでいる場所などのデモグラフィックデータと既存顧客から収集したデータを基に、リアルなペルソナをストーリー仕立てで作成していきます。
「Soup Stock Tokyo」の創業者 遠山正道さんの著書「スープで、いきます 商社マンがSoup Stock Tokyoを作る」(新潮社)の中で、「1998年 スープのある一日」という原点となるストーリー仕立ての企画書の話が書かれています。「田中」という秘書室に勤める女性のペルソナが、どのようなライフスタイルで、どのような価値観で、商品のスープを購入しているかが物語形式で詳細に記載されています。
起業する前に、ペルソナ、そして、商品がここまで詳細に決まっていたことに驚かされます。マーケティングを担当する人にとっては必読の一冊です。
デモグラフィックデータを基に、リアルなペルソナのライフスタイルや価値観をイメージできるようなストーリーを作り上げてください。
Step4:テストマーケティングを行いPDCAを回す
ペルソナは一度設定すれば終わりという訳ではありません。テストマーケティングをすれば、認識の違いを発見できるかもしれません。結果を基に、検証・修正・再テストを繰り返してください。
また、販売を続けていく中で、ユーザーは年齢を重ねていきます。また、流行も変化していきます。時代に合わせて修正を加えていくようにします。
まとめ
ペルソナ設定は、マーケティング活動の一部です。効果的に商品を訴求していく上で、顧客理解は、最初に行わなければいけないことです。
「なぜ、商品が売れるのか?」それは、ユーザーが求めているからです。ただ、すべてユーザーが求める商品はありません。逆に、いらないと思うユーザーのほうが大半です。しかしながら、多くの経営者は、すべてのユーザーに販売する商品を作ろうとしてしまいます。
そうではなく、一部の熱狂的なユーザーに求められる商品をつくることに全力を注ぎます。そして、その熱狂的なユーザーは、どんな人物で、どんな価値観を持ち、どんなライフスタイルの生活を送っているのか、を明確にしていく。それがペルソナ設定です。
顧客を理解することが商売の基本です。ぜひ、ペルソナ設定にチャレンジしてください。